プロレスに、「投げっぱなしジャーマン(スープレックス)」という技がある。
会社の同僚に、その「投げっぱなしジャーマン」の使い手がいる。
といっても、実際のプロレスの話ではない。
ジャーマンスープレックスも関係ない。
その同僚は、とにかく仕事を人に放り投げるのだ。
それを僕は、投げっぱなしジャーマンと呼んでいる。(意味はない)
この人、基本的に仕事ができない。
能力が入社2~3年で止まっており、数年でたいていの社員に抜かれていく。
しかしありがたい事に年功序列制度の根づいているこの日本で、立場だけはみんなと一緒に上がっていく。
よって、仕事のレベルは上がっていくけれど、仕事はできないので、人に委託することになる。
委託するのがいつもつるんでいる仲間内なら良いのだが、たまにそういうわけにはいかない状況がある。
例えば僕のような偏屈な人間と仕事を組むことになる時など大変だ。
この人が仕事が出来ないのは僕も知っているので、難しい仕事は頼まないのだが、簡単な仕事についてもなかなか一筋縄に行かない。
以前、僕とペアを組んで仕事をすることになった時のこと、彼は現場監督を、僕は事務所で図面作成といった役割分担で仕事を進めていくことにした。
しばらくたったある日、彼から、職人から現場の納め方について相談をされたところ、彼には解決できなかった(する気がなかった)らしく、電話がかかってきた。
電話で話を聞くも、いまいち要点がつかめない。正直、何を言いたいのかまるっきりわからないのだ。
仕方が無いのでこちらから一つ一つ質問し、回答を得ることになるのだが、「わからない」と言う回答のなんと多いことか。
実は、彼は、職人からの質問の内容もわからず、職人から言われたことをほぼオウム返し的に伝えているだけだった。
だから当人には本来の質問の趣旨もわからないし、こちらからの問合せにも対応出来ない。出来るはずがない。
それでもただ仲介をしてくれるだけなら良いのだが、なぜかその人、自分の感情をおりまぜて脚色してしまう。
そうなれば、もう話は別の方向に行ってしまう。
諦めて現場で職人と直接話すと、なんのことはないのだが、彼をひとり仲介したために、結構大事になることがある。
これが「投げっぱなしジャーマン」の技のうちのひとつである。
かなり強烈な技だ。
僕も受身を取れるようになるまで、かなり時間がかかった。
いなければ人手不足で困るが、いたらいたで困る存在。
そんな投げっぱなしジャーマンの使い手と、これからも付き合っていかねばならないのだろうか。